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先人の知恵 by 濱田耕司



第7話「荒壁を付ける」

 昔の家は、どこのお宅にもエアコンなんて物はなく、風通しの良い、隙間風の入るような家で生活していました。現在のようにアトピー性皮膚炎や花粉症といった病気はありませんでした。
それだけ健康的な生活だったということです。(住宅だけの問題ではなく、食生活も関係しているとは思われますが。)でも、今では隙間風の入るような住宅は嫌われています。
荒壁は、竹小舞をかけ、ワラを練り込んだ土を塗り固めて作る、職人の手間と時間のかかる作り方です。荒壁は極めて大きな調湿効果、断熱蓄熱性能、防火性能、防音効果があります。荒壁の土や竹やワラは生産時のエネルギー消費も少なく、また、廃棄時も土に帰るので環境に優しいのです。荒壁は柔軟性を持ちながら粘り強く建物を支える優れた耐力があります。現在の耐力倍率が見直され、近々更に倍率が上がると言われている。
またグラスウールの住宅と竹小舞土塗り壁の住宅を、一年を通して比較したところ、竹小舞土塗り壁の家は夏は2〜3度涼しく、冬は2〜3度暖かいというデータがとれました。エアコンは電気を使いますし、永久に壊れない訳ではありません。それに対し、土壁の家は電気を使わず、上記のような優れた特性を永久的にもたらしてくれるのです。
 似たようなもので井戸水があります。夏、汲み上げると冷たく、冬は、ちょっぴり暖かく感じる。つまり、地中深い土の中で周りの外気に大きく影響されないからそう感じるのです。土塗り壁の家はまさにそれです。夏涼しく、冬暖かい。あまりに暑い、寒いという時はエアコンを使うのは仕方がないとしても、普段はまったく使わなくてすむようになります。エアコンを使って冷やした部屋や自動車から出た時、体がだるく感じる事があると思いますが、健康に良い訳がありません。やはり、自然体が一番良いということですね。

しかし近頃では、本当にまれにしか荒壁を塗った建物は見かけられなくなりました。柱の間に最初の壁土を塗ることを「荒壁を付ける」と言います。木造住宅に関心のある方は、「荒壁を付けると良いのはわかってるんだけど、乾くのに時間がかかるし、手間もかかるからなぁ」と、知ってはいても荒壁を選ばなくなっています。いつの頃からか、荒壁付けをすることを「湿式工法」と呼ぶようになりました。「乾式工法」とは、外壁や建物内部の壁面に石膏ボード(プラスターボード)などを使って家を建てると、壁土が乾燥する時間を省略でき工期が短縮できる利点があります。
 でも、工期の短縮は誰にとっての利点だったのでしょう。施主よりも、工事業者の方が工事を短期間で終了することが出来て資金繰りが楽になり、よりたくさんの工事を請負うことが出来ることが狙いだったのかも知れません。早く手放れよくと言う観点で住まいを作るのではなく、住まいづくりをより味わいながら楽しめる作り方です。
 
 荒壁の良いところは、
   ・耐火性(土だから燃えません)
   ・耐震性(竹小舞と土がパネル状になるので強いです)
   ・断熱性(土壁の厚さがあるので熱を通しません)
   ・調湿性(土が湿度調節します)
   ・遮音性(遮音性は重量に比例するので)

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